2021.08.31(Tue)

夫が働けなくなったら、もらえるお金はどれくらい?

社会保障制度

例え共働きで、ママもそれなりの収入があるとしても、『もし夫が働けなくなったら…』を想像した時に多くのママが不安になるでしょう。

特に子供が小さく、『これから教育費がどれくらいかかるか…』と気になっている頃であれば、なおさら。

最近は医療の発達により、死亡リスクよりも働けないリスクの方が高いとされていますし、うつ病などの精神疾患によって働けないケースも決して珍しくありません。

そんな背景から、死亡リスクと同じくらい、働けないリスクが気になるママも多いのが現状です。

今回は、『夫が生きているけれど働けない…』そんな時にもらえるお金をまとめました。

働けなくなった時に出るお金

傷病手当金

会社員であれば、病気やけがで連続して3日以上仕事を休んだ場合は、4日目から傷病手当金が給付されます。(国民健康保険のみに加入している場合は、給付はありません。)

まずはこちらをチェックしましょう。

  • 期間:開始を支給開始日から1年6カ月
  • 受け取れる金額:標準報酬月額の3分の2

支給条件など詳しくはこちら(協会けんぽのページに飛びます)

※標準報酬月額とは4月、5月、6月の報酬総額を3で割った額

注意!社会保険料が引かれる

『働けなくなっても、給料の大体3分の2がもらえる。』

そう知れば、『何とかなりそうかな』と楽観的になるママも少なくないでしょう。

でも手放しに楽観視するのはまだ早い!

実はそこから社会保険料が引かれます。

このとき支払う社会保険料は傷病手当金受給額(およそ月給の3分の2)を元に計算されるわけではなく、あくまで標準報酬月額を元に計算された額になりますので、実際の手取りは額面の半分くらいというイメージになります。

  • 参考:標準報酬月額30万円の場合(勤務地:東京、年齢41歳)
  • 20万円(30万円×3分の2)- 4.5万円(以前の報酬で計算された社会保険料)⇒ 15.5万円

もちろん、傷病手当金はあるに越したことはありませんし、万が一働けない時はとても頼りになる制度でもありますが、楽観しすぎは禁物です。

就労不能になってしまった後は、『パートナーの手取りが3分の2ではなく、目安として額面の半分くらい』という前提で、生活を考える必要があります。

2022年1月から傷病手当金の給付期間が変わります!

傷病手当金の給付期間は、給付開始日~1年半です。

例えば、

いったん傷病手当金を受け取り始めて

⇒その後、仕事復帰で受け取り中断

⇒再発で傷病手当金の受け取り再開

…となったとしても、給付開始日から1年半後には給付終了となります。

つまり現時点では傷病手当金は、受け取り日数ではなく、支給開始からの経過期間でその後の給付の有無が決まります。

 

これが、2022年1月から変わります!

変更後には、一度仕事に復帰し支給されなくなった日数がある場合は、支給開始から1年半を経過していても延長して受給できる(日数通算で1年半まで受給可能)ようになります。

例えば、中長期にわたって症状が良くなったり悪くなったりすることを繰り返すことが多い精神疾患などの場合は、より多くの金額を受け取れる可能性が高いのではないかと考えられます。

会社の保険をチェックしてみる

会社によっては、社内制度として社員が就労不能時になった時の保障を準備している会社もあります。

GLTD制度(団体長期障害所得補償保険)といって、社員が病気やけがで休職することになった時に傷病手当金で足りない部分を、会社の加入している民間の保険で保障してくれる内容のものです。

保障内容は会社によってまちまちですが、最長で保障期間が定年まで続くものもあります。

1000人以上の会社の18%が加入していとのデータもあるので、特に大手企業にお勤めの方は確認してみる価値があります。出典:労務行政刊『労政時報』第3957号(18.9.14)

傷病手当金を確認すると同時に、社内制度もくまなくチェックしてみましょう。

障害年金

社内制度でGLTDがなかった場合、『傷病手当金が受け取れる1年半を経過したら、何も受け取れなくなるのか?』というと、そういうわけではありません。

症状が悪化したままで就労が難しい状況で、条件に該当すれば、障害年金が受け取れます。

会社員で厚生年金の場合は、症状が悪いまま固定し給付条件に該当する場合は、

  • 傷病手当金(支給開始から1年半まで)⇒障害年金(1年半後~)

を受け取ることができ、就労不能時の公的保障を継続的に受けることができます。

障害厚生年金について詳しくはこちら

 

障害年金は、障害基礎年金と障害厚生年金に分かれており、会社員の場合両方受け取れます。

年金額は収入や家族構成によって違います。

例えば、妻と子供がいる会社員(41歳、標準報酬月額30万円)が障害等級2級と認定された場合、障害年金額は約158万円/年になります。

※大学卒業後以降18年間勤務と仮定した場合。日本年金機構のHPを参考に令和3年度4月適用の式で筆者計算。妻の年収は850万円以下とする。

 

フリーランスなど会社員ではない方の場合は、障害基礎年金のみ受け取ることができます。(詳しくはこちら

こちらは収入や勤続年数に関わらず、妻と子供がいる人の場合、一律約100万円です。

つまり、フリーランスのように国民年金のみの方は傷病手当金の給付がないため上に、障害年金も基礎部分のみとなり、就労不能時の保障は自分自身で準備する必要性はかなり高いです。

就労不能時の備え

日ごろから家計をコンパクトにしておく

就労不能時の状況について不安があるのは、当然のこと。

対策できるのであれば、その選択肢の一つは、日ごろから家計をコンパクトにしておくこと。

多少の収入減があったとしても乗り越えられる態勢に整えておければ、それが理想的です。

  • 家計をコンパクトにしておく
  • ⇒貯蓄できる金額が増える
  • ⇒不測の事態にもライフプランが影響を受けにくい

ということになりますので、まずは支出の最小限化を計りましょう。

就労不能時に給付される保険に加入

それでも、子供育てながらの家計は余裕がないケースも多いものです。

そんな場合は、十分な金融資産が形成されるまでは保険に入っておくのが一般的です。

最近では、死亡時と就労不能時の両方の保障を兼ねそろえた保険でも、月々数千円で十分な保障内容の保険を持つことができるので、必要な人は検討してください。

就労不能時のための保険と一言っても、実際には3種類ありますので、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

まとめ

もちろん、何事もなく退職を迎えることができればそれに越したことはありません。

しかし、日ごろから様々な世帯の相談を受けていると、時に配偶者に先立たれたアラフォーママのご相談や、パートナーが様々な事情で働けなくなってしまったという相談ケースに遭遇することも、実際あります。

正直、『万が一』のケースの対応は、起こってからでは有効な対策がかなり難しいものです。

 

基本的に『万が一』に対しては、起こってしまう前に保険などを使って最低限の備えをしておくことや、起こっても影響が極力少ない状況を整えておくことが、最も効率よい方法だと考えます。

 

まずは、自分の場合の公的な保障を確認し、必要な場合は保険などで事前に備えておきましょう。

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