2022.04.21(Thu)
【共働きの扶養】妻が夫の年収を逆転!子供の扶養はどうする?
教育費・子育て / 社会保障制度最近時々耳にするのが、『今年私(ママ)の年収が上がって夫の年収を超えそうなんですが…』というお話。
夫婦共にフルタイムでバリバリやっていると、こんな話は決して珍しくはありません。
…で、年収が逆転すると…子供がいる共働き夫婦にとって気になってくるのが『夫と妻のどちらを子供の扶養にしたらいいのか?』ということ。
今回は、夫婦の収入がほぼ同等だったり、ちょうど逆転するタイミングで子供をどちらの扶養に入れて控除にするべきか考えた時に知っておきたい情報をまとめています。
※扶養控除には税法上の扶養と健康保険上の扶養が2種類ありますが、税法上の扶養について書いています。
※税法上、扶養控除の対象となる子供の年齢は16歳以上ですが、16歳未満のお子様の扶養の場合で知っておくべき情報がありますので、最後までご確認ください。
子供を税法上の扶養に入れるための条件は?
子供を扶養にする条件は扶養親族の対象年齢は、その年の12月31日時点での年齢が16歳以上の人です。
『夫婦のどちらか高い方の収入にしなければいけない』ということもありません。
また複数子供がいる場合は、上の子は父の扶養、下の子は母の扶養に…と重複しない限り夫婦それぞれの扶養にすることも可能です。(国税庁のページより)
共働きの扶養、どっちがお得?
収入が高い方に入れるのが基本
一家の大黒柱、世帯主と言えばもちろん夫…そんな固定観念からか、『子供の扶養は夫に入れるべき』と考えている人も多いものです。
でも基本的には収入の高い方が子供を扶養に入れておくと節税効果が高くなります。
日本の所得税は、累進課税。
所得が高くなればなるほど、扶養控除された場合の節税効果は高いと言えます。
※子供が16歳未満の場合は扶養控除の対象になりません。
分けた方がいいかどうかはケースバイケース。試算サイトで確認を!
上記に示した通り、子供の扶養は夫婦のどちらに入れてもいいし分けてもOK!です。
でも、まとめた方がいいのか分けた方がいいのかはケースバイケースです。
例えば、以下のケースで比較してみましょう。
- 家族構成:共働き夫婦、16歳以上の子供2人
- 年収:夫婦それぞれ年収600万円で世帯収入1200万
- ※健康保険料は90万円、生命保険控除、住宅ローン控除等は使わないと仮定する
- ※所得税の計算はこちらのサイトKEISANを参考とする
夫の所得税 | 妻の所得税 | 世帯の所得税 | |
夫婦それぞれが一人ずつ扶養した場合 | 16.25 | 16.25 | 32.5 |
夫が二人の子を扶養した場合 | 12.45 | 20 | 32.45 |
単位:万円
このように見ると、夫婦どちらかに扶養をまとめても大きな差はなさそうです。
では次のケースです。
- 家族構成:共働き夫婦、16歳以上の子供2人
- 年収:夫婦それぞれ年収700万円で世帯収入1400万
- ※健康保険料は108万円、生命保険控除、住宅ローン控除等は使わないと仮定する
- ※所得税の計算はこちらのサイトKEISANを参考とする
夫の所得税 | 妻の所得税 | 世帯の所得税 | |
夫婦それぞれが一人ずつ扶養した場合 | 22.8 | 22.8 | 45.6 |
夫が二人の子を扶養にした場合 | 19 | 30 | 49 |
このように見ると、700万円×2の収入の場合は、扶養を分けた方がお得になっているのが分かります。
夫婦の年収が近い場合のチェック項目
さて、この違いはどこから出てきているのでしょう?
それは、控除を受けることで所得税率が下がるかどうか?がポイントです。
夫婦の年収が近い場合は、所得に注目
夫婦間で収入の開きが多い方は、シンプルに収入が多い方の控除を受けるのがいいでしょうが、ほぼ同等な場合は、それぞれの所得に注目してしっかり確認してみましょう。
所得とは、実際に所得税がかけられる金額のことで、年収=所得ではありません。
私たちの所得は、年収から様々な控除(例えば、給与所得控除や社会保険料、扶養控除など)を引いた金額のことです。
- 所得(所得税が課税される金額)=年収-さまざまな控除
生命保険の保険料控除や地震保険料控除のほかには、iDeCoや会社の確定拠出年金で自分が積み立てている金額も所得控除の対象になります。
控除されている項目は人によって違いますので、まずはそこをしっかり確認してみましょう。
所得税率の変わり目にいる場合は、分けた方がいい場合も!
夫婦それぞれの所得が分かったら、次に考えたいのは所得税率です。
先に述べた通り、日本の所得税は累進課税。
所得が高くなればなるほど、税率も高くなる仕組みです。
課税される所得 | 税率 | 控除額 |
1,000円 ~1,949,000円まで | 5 | 0 |
1,950,000円 ~ 3,299,000円まで | 10 | 97,500円 |
3,300,000円 ~ 6,949,000円まで | 20 | 427,500円 |
6,950,000円 ~ 8,999,000円まで | 23 | 636,000円 |
9,000,000円 ~ 17,999,000円まで | 33 | 1,536,000円 |
18,000,000円 ~39,999,000円まで | 40 | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45 | 4,796,000円 |
国税庁のHPを参考に筆者作成
例えば、夫婦ともにぎりぎり所得税率20%にかかってしまう所得ケースを考えてみましょう。
夫婦それぞれが、所得で言うとちょうど330万円を超えてしまって税率が20%になってしまう場合です。
この場合、『それぞれが扶養控除を使うことで税率が10%に落ちた!』なんてことがあれば、一人の親が二人の子供をまとめて扶養するよりもお得になるというわけです。
会社からの手当も漏れなくチェック!
またチェックポイントとして会社の福利厚生制度が挙げられます。
勤め先の会社によっては、子供を扶養している場合は会社から扶養手当や住宅手当といった給付があることがあります。
これは社内制度であるため、子供の年齢が16歳未満であっても給付の対象になる場合も少なくありません。
税金の控除部分でのお得分と社内の扶養手当で得られる手取り分を考慮した上で、どちらの扶養に入れるか決断しましょう。
まとめ
夫婦の家庭内での役割や形態も多様化し続けています。
これまで当たり前のような感覚であった『子供の扶養は夫』、と決めてかかる必要はありません。
また、これまでのように『みんながそうしているから、それが一番いいんでしょう』という『常識』が、あなた自身にとっても一番いいとは限らないかもしれません。
何に対しても一度立ち止まって考えてみることは、今後より意味を持ち、ますます効果あることになるでしょう。
国の税制、個人が所属する勤務先の制度で何が自分にとってお得になりそうか?きちんと把握し、個人の感情としても『しっくりくる選択』を賢く積み重ねていきたいですね!