2022.07.29(Fri)
親から孫の教育費の一括贈与の提案があったら?
教育費・子育てアラフォー→アラフィフに近くなってくると、親もそれなりに高齢になり、相続やら贈与やらが気になってくるお年頃のようです。
ご相談者の中でも、『親から教育費の一括贈与の提案を受けていて』や『教育費の贈与の提案があったのですが、どんな方法がいいですか?』というご相談がぽつりぽつりと出てきました。
小さな子供を育てるパパママとしては本当にありがたい提案ですが、いろいろな制約もあり、『なんだか面倒くさそう…』としり込みしてしまう人もいます。
まずは、非課税で教育費が贈与される2つの方法を把握して、それぞれのメリットデメリットを踏まえましょう。
我が子にとっては、せっかく祖父母からのご提案。
祖父母・親・子の三世代が笑顔になるような決断ができるといいですね。
方法1. 必要な時に教育費の贈与を受ける(都度贈与)
意外と知られていないのですが、進学時や授業料の払い込みなど教育費に必要と考えられる資金の贈与であれば非課税です。(都度贈与)
都度贈与は、祖父母が孫の教育費や生活費のうち通常必要と認められるものを、その都度贈与するというものです。
基本的には『扶養義務の範囲』という考えのもとに、例えば、孫の入学金や授業料をその都度負担しても、非課税となります。
具体的な金額として非課税額の上限は定められていませんが、一般的な金額(大学費用なら400万円前後)を超えない範囲がひとつの目安になりえます。
贈与された資金の使い道を明確にしておくために、金融機関の振り込みを使うことで記録を残しておきましょう。
- 手軽に非課税で贈与をしたい
と考える祖父母にとっては、メリットが大きい方法です。
方法2. 教育費の一括贈与(1500万円まで)で非課税で受け取る
教育費の一括贈与は、30歳未満の孫などが祖父母などから教育資金の贈与を受けた場合、孫1人あたり最大1,500万円までが非課税になる制度です。(2023年3月まで)
特徴は、一気に非課税で贈与できること。
でも、様々な制約があり使い勝手が悪いと感じる方も多いようです。
例えば、贈与されるには以下のようなちょっと面倒な手続きが発生します。
・贈与専用の口座を設置しなければいけない。
・資金利用の目的は、教育費に関連するものに限定。払出には領収証も必要。
※制度のあらまし、対象となる教育費詳細はこちらで確認できます。
利用するには少し面倒な面もあるこの制度ですが、祖父母が利用する際はどんなメリットがあるのでしょうか?
- ①相続税がある程度かかると分かっていて、まとまった金額を一気に孫に非課税で贈与したい
- ②相続時に、複数いる孫の公平性を保つために分かりやすく贈与したい
- ③祖父母自身に『認知能力が下がる前に、孫にちゃんと贈与しておきたい』という希望がある
大きく分けるとこの3つですが、一つ一つ確認していきましょう。
メリット①相続税を抑えられる可能性がある
①のように相続税がある程度かかると分かっている人が一気に孫などに贈与するメリットとしては、非課税枠で贈与することで、将来かかりそうな相続財産を少なくすること→相続税を抑えられることです。
ある程度資産がある方であれば、『自分の財産に相続税がどの程度かかるのか?』を調べてもらったりしているのはよくあること。
その金額が本人の想定を超えるような場合、『だったら、孫に非課税で贈与できるこの制度を使ってみてはいかがですか?』と金融機関や税理士やFPなどからの提案を受けたり、自分でも何か方法がないか模索したりして利用に至ることがあります。
しかし、状況によっては、非課税ではなく相続税の対象となる可能性もありますので、非課税となる条件を利用前に必ず確認しておきましょう。(例:祖父母が亡くなるタイミングが贈与契約開始から3年以内で孫が23歳以上の場合など。)
メリット②孫への公平性を保ちやすい
何歳であれ、孫も一人の人間。
複数いれば、それぞれ個性もあることでしょう。
前述した『都度贈与』は確かにお手軽で良い方法ではあるのですが、その都度贈与を行っていった場合、この『それぞれの個性』の違いが原因で『贈与金額が結果として全然違ってた…!』ということも十分あり得ます。
例えば、ある孫の進学先は理系の大学院、ある孫は高校卒業で就職…なんていうこともあるかもしれませんよね。
それぞれの必要な学費に対応していたら、進路の違いから最終的な贈与額が意図せず孫によって全然違ってた…なんて結果もあることでしょう。
しかし、あまりにその差が大きすぎると親族間のもめごとの芽になりかねません。
そんな事態を防ぐために、『孫に贈与する資産は分かりやすく予め分けておきたい』『それぞれの孫に平等に資金がいきわたるように、決まった金額をそれぞれに一括贈与しておきたい』と考える祖父母が一定数います。
そんな場合も、この一括贈与制度を利用するメリットがあると考えます。
メリット③自分の資産の活かし方を自分で決められる
『いつまでも元気でいたい』と多く人が望み、『親には元気でいてほしい』と多くの子供が願いますが、これも永遠というわけにはいきません。
どんなに賢い人であっても、一般的に認知能力は加齢とともに低下しがちです。
『いつまでも元気でしょう』そう思っていても、いつの間にか、自分の資産を自分で管理できなくなってしまうということも、十分あり得ます。
そんな時、『もともと孫の教育費は都度贈与で…』と予定していたけれど、自分の認知能力の低下によってそれができなくなってしまったということも、起こりえます。(認知能力がないと金融機関に判断されると、取引に制限がかかることがあります)
そうなってからでは、『自分の資産を孫の教育費に…』という想いがあったとしても実行することは難しくなります。
でも一括贈与しておくことで、そういったリスクを避けることができるのです。
知っておきたいデメリット
一見、都度贈与の手が届かないところをうまくカバーできているように見える教育費の一括贈与ですが、知っておきたいデメリットもあります。
それは、運用の機会を得られないこと。
特に、孫がまだまだ幼く、本格的に使うまでには10年以上…という場合は、そのまま『その期間は現金を口座に現金で置きっぱなし状態』になってしまいます。
教育費は、物価上昇率が高いと言われる分野の支出です。
10年以上先に使う教育費(インフレ中)を、ほぼゼロ金利で放置しておくのはあんまりよい選択肢とはいえません。
この場合は、贈与される資金の一部をJRNISAなどで一部を運用することも考えてもいいでしょう。
まとめ
贈与の仕方は大きく分けると二つありますが、それぞれメリット・デメリットがあります。
状況によって、使った方がいいやり方は違いますので、単純に非課税枠の大きさだけで制度を選択するのではなく、多角的な視点から、どんな方法が自分にとって適切なのかを検討していく必要があります。
祖父母が大切に作ってきた資産です。
まずは祖父母の意向をしっかり確認した上で、お話を進めていかれることをお勧めします。