2020.09.17(Thu)

『住宅ローンの繰り上げ返済、しないで運用!』と決める前に確認すべき3つのこと

ライフプラン / 住宅 / 資産運用

住宅を購入して一息つくと、『住宅ローンって繰り上げした方がいいのかなぁ』と検討し始める人も出てきます。

多くの場合、貯蓄がまとまった金額になってきたタイミングだったりするのですが、ネットでちょっと調べたりすると『この低金利なら運用した方がお得!』とか『住宅ローン控除のある10年間は繰り上げしないのが正解!』とか…果たしてどれが正解なのでしょうか?

アラフォー出産ママの場合は、たとえ子どもが小さな時にある程度余裕がある家計であっても、子供の成長とともにお金がかかり出す50代には給与が減少…なんてこともあるので、慎重な対応が必要です。

 

住宅ローンの繰り上げ返済をした方がいいかどうか…それは、ケースバイケースです。

しかし決断するために、誰しも確認しておきたいポイントは3つ!

  • ・ライフプランを確認すること
  • ・『住宅ローンの控除期間中の10年は繰り上げしない方がお得だ』とは限らないこと
  • ・資産運用の結果は約束されているわけではないこと

ここを抑えて、適切な決断をしていきましょう!

必ずライフプランを確認しよう

繰り上げ返済で一番注意しなければいけないことは、繰り上げ返済しすぎてしまうことで、必要な時に必要なお金の準備ができないこと。

『今、このお金遊んでるから繰り上げに充てちゃお~』と充てたお金は、もう2度と戻ってきません。(繰り上げた効果として、返済期間が短くなったり利息が軽減される効果はありますが)

将来の収支をないがしろにして、どの程度の繰り上げ返済が妥当であるか?決断することはできません。

繰り上げ返済する時に忘れてはならないのは、

  • ・緊急予備資金として生活費の半年~1年分は現金として残すこと
  • ・将来使いそうな教育費などがきちんと確保される(される予定)かを確認すること

の2点です。

75歳や80歳までローンが続く予定の人は、さっさと繰り上げてしまいたいと思う人もいるでしょうが、まずは子育て期間中に繰り上げ返済がどの程度影響を及ぼすか?もしくは、どれくらいの金額の繰り上げ返済であれば、教育費に影響がないか?を必ず確認しましょう。

住宅ローンの控除期間10年は繰り上げ返済しない方がいいのか?

ご相談者の方とお話ししていると、当然のように『住宅ローン控除期間の10年は繰り上げ返済しません』と言い切る人がいます。

住宅ローン控除とは、マイホームをローンで購入した場合において、一定の割合に相当する金額が所得税(控除しきれない場合は住民税からも)から控除される制度のことです。

例えば、年末時点で住宅ローンの残高が3000万円ある場合。

ローン返済期間が10年以上あることを条件に、控除率1%である30万円の税額控除となります。(確定申告で約30万円が戻ってくる)

 

それだったら、借入金額を減らさず控除をしっかり使った方がお得!と考えるかもしれませんが、これも一概には言えません。

控除をしっかり使った方がお得か?繰り上げ返済した方がお得か?は、その人が借りている金利、借り入れている金額、期間、繰り上げ返済するタイミング等によっての回答が変わってきます。

※また納めている税金以上に控除はありませんので、必ずしも『借り入れている金額の1%=控除額』とも限りません。

例えば、

  1. ・借入金額 3000万円
  2. ・借入金利 1%固定
  3. ・借入期間 35年
  4. ・年末借入金残額の1%の控除を受けているものとする

上記の条件のもと、

全く繰り上げ返済をしなかった場合と、1年後に100万円を繰り上げした場合はどうなるでしょうか?

繰上無の場合 繰上有の場合 繰上有の結果
金利累計 557万円 518万円 39万円お得
住宅ローン控除累計 259万円 250万円 9万円損

※ライフプランソフト大成功家族を使用し筆者が計算&作成。金利累計は35年間の支払金利の累計額。住宅ローン控除累計は10年間で控除された累計額。

このように比較すると

結果:控除期間中の繰り上げ返済であっても、繰り上げ有の方が30万円お得になった

ということが分かります。

繰り上げに関わる損得に関しては、それなりに大きな金額での差が出るケースも多いですし、繰り上げのタイミングや金利によって、どちらがお得になるかどうかはケースバイケースです。

周囲の『10年間の控除がある間は、繰り上げしない方がいいと言うから』といった言葉に惑わされず、自分の場合はどうなのか?を必ず確認しましょう。

繰り上げ返済か?運用か?迷ったら

最近の住宅ローンは超低金利。

変動であれば0.5%を切るローン商品も少なくありません。

こんなに低い金利だったら、繰り上げ返済しないで運用した方がいいのではないか?

そう感じる人もいるでしょう。

確かに、世界株や日本株も取り入れた長期分散運用であれば、0.5%以上のリターンを得ることは難しくはない可能性が高いでしょう。根拠はこちら→

そこで、以下の条件で比較してみました。

先ほどの条件

  1. ・借入金額 3000万円
  2. ・借入金利 1%固定
  3. ・借入期間 35年

の下、

①毎月3万円を繰り上げ返済に充てた場合

②毎月3万円を2%で資産運用できた場合

どれくらいの差が出るのでしょうか?比較してみました。

結果は以下のようになりました。

やったこと お得になった金額
住宅ローンを毎月3万円繰り上げ返済した場合 165万円(繰り上げにより減った金利)
積み立て投資を毎月3万円した場合 278万円(2%の運用により増えた金額)

※住宅ローンの繰り上げは、期間短縮としたため、35年ローンは25年5カ月で完済。よって、運用期間も305ヶ月間3万円を2%で運用できたものと仮定して計算。住宅ローン控除は考慮しない。(ライフプランソフト大成功家族を参考にし、筆者計算)

 

結果、同じ3万円であれば、2%で運用できた場合が113万円メリットがあると分かりました。

ここで考えると、運用した方が有利では…?と考えられますが、決断する前に留意して頂きたいポイントもあります。

繰り上げ返済の利息軽減は確実だが運用益は未確定

お得になりそうな金額だけに目を奪われてはいけません。

運用益と繰り上げ返済による軽減利息には、決定的な違いがあります。

それは、『約束された結果』か『約束されていない結果』かであること。

運用結果は約束されたものではないが、繰り上げ返済の利息軽減は約束されたものです。

この違いは、とっても大きいもの。

運用の知識が未熟にもかかわらず、なんとなくネットで得た情報で資産運用や投資をするのであれば、繰り上げ返済を地道にした方がいい場合もあります。

資産運用を優先していきたいと考えるのであれば、専門家(弊社でも承ります)への相談や信頼できるやり方をきちんと習得することが必要になると考えます。

繰上返済したお金は戻ってこず、資産運用中のお金は自由に使える

また、運用と繰り上げするお金に関しては他にも決定的な違いがあります。

 

それが、資金の流動性。

 

『繰り上げ返済をしました』→もう、そのお金は如何なる理由があって『返してくれ!』といっても返ってくるものではありません。

しかし、運用中のお金は違います。

例えば投資信託で運用しているのであれば、解約はいつでも自由。

何らかの理由で資金が必要になった時は、それを解約して使いたいように使うこともできます。

 

例えば、上記の例では毎月3万円の繰り上げ返済をした場合は、26年と5カ月で残債は0になっていて、ローンからは解放されています。

一方、毎月3万円を積み立て投資し2%の運用ができた場合では、繰り上げ返済していない分ローンの残債はまだ900万円弱残っていますが、コツコツ積み上げた3万円は26年半後には、約1200万円になっています。

 

住宅以外にも教育費でお金がかかるアラフォー出産夫婦には、資金に流動性があるかどうかは重要ポイントです。

この点に関しても、やはり『繰り上げ返済していいのか?』『より流動性がある形としてキープするのか?』を自分のライフプランに合わせて決定すべきです。

まとめ

住宅を買うとなったら多くの人が使う『住宅ローン』。

最も身近なローンではないでしょうか?

だからこそ、巷では必ずしも適切ではないと思われる情報が、さもすべての人に該当する情報のように出回っています。

住宅ローンの繰り上げ返済、するかどうするか迷ったら以下を必ず確認しましょう。

  • ・あなた自身のライフプラン
  • ・『住宅ローンの控除期間中の10年は繰り上げしない方がお得だ』は自分にも当てはまるか?
  • ・自分に合った運用方法をきちんと理解し実行できるか?

 

ここをクリアにできれば、あなたにとって適切な判断がきっとできるはずです!

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