2020.07.07(Tue)

高齢の親の保険を考える。それって本当に合理的?

保険

共働きで子育て中の世帯のご相談を多く受けていると、『ウチの両親がこんな状況でして…』と時々ご相談いただきます。

そんな時に多いのが、『保険に入っていないから、万が一の時心配で…』というもの。

特に自身が介護をメインでする予定となっている方であれば、気になるのも当然です。

でも、高齢での保険の加入は保険料が割高になることも多く、慎重な対応が必要です。

『本当に必要な保険が何かを見極める・そもそも必要なのかを見極める』ことが大切になってきます。

 

保険の原点である『少しの保険料で、万が一の時は戻りが大きい』という点に間違いがないか? 必ず確認しましょう。

 

両親の老後資金以外で、お葬式代や医療費の準備がある場合は、保険の準備は不要[です。

 

残念ながらその準備がなかったとしても、

  • ・相続税の負担を軽減したい
  • ・死後、必ずお金が渡るよう手配したい人がいる

 

という目的以外で高齢になってから親が保険に入るのは、かなりコスパが悪くなる可能性大です。

あなたは大丈夫ですか?

まずは親の経済状況を確認

お金や資産状況のこととなると、家族間で話し合うのも気が引けるもの。

しかし、親の経済状況が分からないと、必要な保障が分からないのも事実。

ここは同意の上、現状を把握し、そもそもどんな保険が必要となりそうかを考えていきましょう。

 

医療保険を試算してみた

目ぼしい金融資産がほとんどかなった…ということであれば、保険の加入を考えたくなる気持ち、分かります。

それでは、実際に70歳男性の保険料を計算してみましょう。

 

『なんだかみんな入っているから…』という理由で選択されがちな医療保険。

確かに出番は多そうですが、払い込んだ金額以上に給付がありそうかどうか、冷静に計算することも必要です。

特に高齢者になってからの加入の場合は、保険料が高くなることも。

例えば、日額5000円で先進医療付きのシンプルなタイプのものに70歳男性が加入しようと思うと、大体7000円~8000円/月くらいになります。(終身払いで)

90歳まで生きると仮定して、7500円の保険料を払い続けると180万円。

勿論掛け捨てです。

可能性はゼロとは言いませんが、払った保険料と同額の180万円の給付を医療保険から受け取るには、360日間の入院が必要になります。

『そうはいっても、先進医療が必要になったら医療保険の特約でもつけてなければ自己負担ですよね?』

 

そんな声も聞こえてきそうです。

確かに、先進医療を受けるとなった時は、やはり大きな自己負担となります。

(健康保険・高額療養費制度など公的制度の対象外となるため)

でも、今やネットで先進医療だけをオンラインで500円で加入できる時代です。

(FPは個別商品のご提案はできないため、商品名は伏せさせて頂きます。すべての先進医療に対応しているわけではありません。)

 

本当に先進医療の備えを考えたいというのであれば、そういった形で加入することもできます。

 

そもそも家計が苦しい高齢の世帯にとっては、医療保険は負担ばかりが大きく、保険料に見合った給付金を受けらない可能性は否定できません。

繰り返しになりますが、保険の原点である『少しの保険料で、万が一の時は戻りが大きい』という点に間違いがないか? 必ず確認しましょう。

死亡保障を試算してみた

こちらでも70歳男性が保険に加入するとして保険料の計算をしてみましょう。

考えられる保険種類はお葬式代であれば、終身保険200万円程度でしょうか?

 

終身保険の場合は、保障が一生涯の上に、貯蓄性もあります。

今回は、分かりやすい円建てで試算しましょう。

70歳から10年間で保険料を払んでしまう設定の場合、200万円の保険金に対して200万円以上払う会社がほとんどです。

 

では、生きている間はずっと保険料を払う終身払いの場合であればどうでしょうか?

解約返戻金が抑えられた割安な保険料タイプの終身保険でも、月1万円程度。

70歳で加入した場合87歳以上も生存していれば、保険料の方が受け取る保険金額より上回ってしまいます。

 

う~ん、微妙…。

人が何歳まで生きるかなんて誰にも分からないですけれども、生存していても決して不思議ではない年齢87歳…。

何とも微妙な設定になっています。(さすが保険会社)

やはりここでも、保険の原点である『少しの保険料で、万が一の時は戻りが大きい』という点に間違いがないか?という点で考えてみましょう。

 

もし男性の平均寿命である81歳まで保障があればいいと考えるとすると、払う保険料より保険金の受け取りが大きいと言えます。

しかし、17年後(87歳)で亡くなると、保険金と保険料はトントンという結論になります。

 

子どもが払う場合に注意すべきこと

以上を踏まえても、それでも『親に保険加入をしてもらいたい』と考える場合で、特に『子供である自分が親の保険料を払う場合』は、以下に注意してください。

保険料が自分のライフプランに影響しないか?

高齢者の保険は、保障内容のわりに月々の負担が重くなることも多く、終身払いにした場合は、保険料の支払いが親の生存中はずっと続くこととなります。

特に子供がいる40代、50代は、教育費や住宅ローンが残っているケースも多く、その上親の保険料も負担となると、それなりの負担となります。

加入前に、夫婦での話し合いは勿論、自分の望むライフプランにどの程度影響が出そうかどうかを確認した上での加入をお勧めします。

保険金受取人は誰?契約形態によって変わる課税方法

契約者や受取人が誰なのかによって、保険金を受け取った時の課税方法が違うことをご存知ですか?

親の保険に入る時に、自分が契約者・受取人となると思わぬ課税をされることとなります。

契約者…保険料を払う人。解約返戻金を受け取れる

被保険者…保険金をかけられる人。

保険金受取人…万が一の時に保険金を受け取る人。

契約者 被保険者 保険金受取人 対象となる税金
子ども 相続税
子ども 子ども 所得税
子ども 贈与税

 

子どもが親の保険料を負担する時、よくやりがちなのが、

契約者…子ども

保険をかけられる被保険者…親

受取人…子ども のケース。

 

この場合だと、子供が受け取る保険金は所得税の対象となります。

この、『〇〇税で受け取る』ということが違うと、手取りの金額が違ってきます。

ちなみに、より少ない課税で保険金を受け取りたいと考えるのであれば、まず考えるべきは相続税としての契約形態です。

 

保険金の場合は、『500万円×法定相続人数』が非課税

お葬式代程度の保険金(200万)であれば、法定相続人が一人で200万円は非課税です。

一方これが所得税の対象となるような『契約者=受取人=子ども、被保険者=親』となる形態であれば、例え200万円の保険金であっても、課税される可能性もあります。

所得税の課税金額は、

課税金額={(受け取った保険金-それまでに払い込んだ保険料)- 50万円} ×1/2

で求められますので、

例え200万円の保険金額であっても、保険料払い込みが20万円で加入後すぐになくなってしまったような場合だと、

(200万-20万-50万)×1/2 = 65万円

65万円に対して課税されることになります。

受け取り方ひとつで、手取りが変わってしまう事実。

しっかり留意して保険の契約形態を決めましょう。

それ以外の保険金の課税について詳しい説明はこちら→ライフネット生命のページに飛びます。

まとめ

個人的に高齢者の保険の保険料はかなりコスパが悪いと考えます。

まずは『その万が一の時のお金、本当に保険じゃないと準備できないものなのか?』

しっかりと確認してみましょう。

保険の原点はあくまでも、『少しの保険料で、万が一の時は戻りが大きい』という点に間違いがないか?ということ。

 

両親の老後資金以外で、お葬式代や医療費の準備がある場合は、保険の準備は不要です。

 

それでも保険が必要と考えられる場合は、

  • ・相続税の負担を軽減したい
  • ・死後、必ずお金が渡るよう手配したい人がいる

の2つに絞られるはず。

それ以外の人は、保険料を払うよりも現金をしっかり貯めて備えるのが現実的・合理的だと考えます。

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